夕食の席で、なぜか千景くんの隣に座らされた。
シェフさんが運んでくれた夕食に目に輝かせる。
お、美味しそう。
「さぁ、食べよっか」
「で、でも……」
できたてのハンバーグからは湯気が上がって、とっても美味しそう。
さっきスイーツを食べたばかりなのに、ぺろりといけちゃいそう。
「わたし、お仕事しなくちゃ」
「綾乃は俺と一緒にいてくれるだけでいいから、冷めちゃわないうちに食べよ?」
そう言われて返す言葉が見つからず、いいのかなと思いながらも、素直に頷く。
ダイニングルームはとても広くて、テーブルも何十人もの人が座れるくらい横に長い。
それなのに真横でほとんど間隔をあけず、ピタッと密着するような距離だ。
「どう? 美味しい?」
「う、うん。わたし、ハンバーグって大好き!」
「ふふ、知ってる」
「え?」
言ったことあったかな?
ハンバーグを好きになったのは大きくなってからなんだけど。
「綾乃のことは、なんだって知ってるよ」
宝物でも見るような優しい顔をされると、大切にされているんじゃないかって勘違いしそうになる。
この顔を見ると、すべてを許せちゃうというか。
わたしはとっても弱いかもしれない。



