それなのにお店に入った途端、店員さんに名前を伝えたらすんなり席まで案内してもらえた。
いつ予約したの?
電話だって繋がりにくいのに。
もともと予約してたのかな?
だけど、そんな感じじゃなかったような?
「綾乃はなにも気にしないで。それよりなに食べる?」
落ち着かず店内をキョロキョロ見回すわたしに、千景くんが優しく微笑みかける。
最上級の笑顔に頬がカァッと熱くなった。
よく見るとお店の女の子たちも、千景くんを見て頬を赤らめてる。
無理もない、こんなに素敵な人なんだから。
「ん?」
思わず見惚れてしまいそうになって、気づかれていないと思っていたわたしは慌てて視線を下にやる。
「なんでもないっ!」
そしてメニュー表を食い入るように見つめた。
ちゃんと、選ばなきゃ……!
「真剣だね。俺のこともそんな目で見てくれたらいいのに」
「え、えと?」
どういう、意味だろう。
千景くんはときどきわからないことを言うので、そのたびにハテナマークが浮かんでしまう。



