「…………」 「千景、くん?」 しばらくの間わたしを見て固まっていたらしい千景くんがハッとした様子で我に返って、小さく咳払いをひとつ。 「……なんでもないよ。ところで如月」 「はっ」 遥か離れた助手席から、側近の如月さんが振り返った。 「俺の言いたいこと、わかってるよね?」 「はっ、もちろんです」 なにやらよくわからない会話が繰り広げられるのを、ポカンとしながら聞いていた。