「千景、くん」


俺の名前を呼ぶ声も、遠慮がちに抱きしめてくる腕も。


綾乃の存在そのものが、愛しくてたまらない。


「ずっと、話せなくて寂しかった……顔見たくないとか言って、ごめんね……」



「いや、俺の方こそ悪かったよ」


まさか綾乃が俺に婚約者がいるって、そんな勘違いをしてたなんて。


嫉妬してくれていたなんて……。



人生でこんなに幸せを感じた日は他にない。