とっさに手を伸ばして、綾乃の頬に流れる涙を拭う。 なんて温かい涙なんだろう。 愛しさがこみ上げてきて、抱きしめたい衝撃に駆られる。 俺に婚約者がいると勘違いして泣くなんて、どんだけ俺を虜にさせたら気が済むの。 可愛すぎだよ、ほんと。 「俺には婚約者なんていないよ」