それほど綾乃しか見えてないって、わかってる? 「千景、くん……」 月明かりに照らされた顔がハッとするほどきれいで、思わずドキッとさせられた。 悲しげに歪められる表情。 泣くのを我慢するかのように、唇を引き結びながらじっと俺を見つめてくる。 俺の知ってる綾乃はもっと子どもっぽくて、それでいて可愛くて。 普段とはちがう大人びた顔は、いとも簡単に俺の理性をグラグラ揺るがす。