「綾乃。お願いだから出てきて……心配なんだよ」
ガサッと音がして、木の後ろにいた綾乃が恐る恐る姿を現した。
「綾乃……」
うつむき気味に立つ綾乃の肩が小刻みに震えている。
昼間はジメジメしているといえども、夜はまだまだ肌寒い。
着ていたセーターをさっと脱いで、綾乃の華奢な肩にそっとかけた。
「どうしてこんなところに?」
「ごめん、なさい……」
「謝らなくていいよ。とにかく……綾乃が無事でよかった」
ホッとして気がゆるみ、安心感が胸いっぱいに広がる。
綾乃のことになると余裕なんてなくなって、いつだっていっぱいいっぱい。



