「千景様っ! 大変ですっ!」
屋敷に帰った頃には、すでに辺りは暗かった。
血相を変えた如月が走ってきて声を荒げた。
「綾乃様が、どこにもいらっしゃいません!」
「えっ?」
綾乃が、いない……?
「最近なにか悩んでおられたようで、元気がなくも見えました。もしかすると、そのせいなのかもしれません。とにかく我々は外を見てきますので!」
綾乃……!
「俺もその辺探してくるっ!」
「はっ、くれぐれもお気をつけて」
如月が言い終えたときには、すでに玄関を飛び出していた。
まさか……綾乃がいなくなるなんて。
俺のせいだ。
グッと唇を噛むと、口の中に鉄の味が広がった。



