「10年間ずっと片想いしてるんだ。その子のことしか考えられないから、夏の気持ちには応えられない」 「……っ」 ポロポロと涙を流して泣く夏に、残酷だと思いながらも言葉を続ける。 「ひとりで戻れる?」 「う、ん」 夏が小走りで去っていくのを見届けたあと、ふと見上げた夜空に満月が浮かんでいることに気づく。