「綾乃!」
「柚……おはよ!」
「うん、それより大丈夫なの?」
「え?」
「顔、すごいことになってるよ。さては、桐ケ谷とちゃんと話せなかった?」
「うっ……」
「元気出してね、気晴らしにはいつだって付き合うからさっ!」
「……ありがとう」
一度だめだと思うととことんだめで、わたしは放課後も昼休みも、そしてお屋敷でも徹底的に千景くんを避けた。
図書委員の仕事があると言ったり、残ってテスト勉強をするんだと言ったり。
ご飯のときも登下校でも、目を合わせないようにしていれば、千景くんからも絡んでくることはなく。



