「綾乃なんて、もう知らない」 理不尽に責められる意味がわからなくて、頭にカッと血がのぼる。 「……っのバカッ」 我慢できなくなって思いっきり叫んだ。 「わたしだって……もう知らないんだから! 千景くんの方こそ、勝手にすればいいんだっ!」 息も絶え絶えになりながら、頬に流れる涙も気にせずに。 「だいたいね……」 婚約者がいるくせに……っ。 「優しくなんかしないでよ……!」 そしたらこんなに好きになることもなくて、ここまで苦しまずに済んだのに……。 「バカァ!」