いつもは逆で、わたしが見おろされる立場だからなんていうか……照れる。


「綾乃が言う好きって……」


そのままの格好で手を伸ばしてきた千景くんに、腰の部分を引き寄せられた。


──ギュッ


わたしの腹部に頭を寄せて、抱きしめてくる千景くん。


ひゃあ……!


──ドキンドキン



シーンと静まり返る保健室内に、わたしの鼓動の音だけが響いているような感覚。


「こういうこと……?」



上目遣いで見てくる千景くんの顔は、とても真剣で。まるで射抜くような眼差しだ。


「俺にこういうことされたいって意味の好き?」



これ以上はもう、心臓が破裂しそうだよ……。



まともに目を見られなくて、恥ずかしさを隠すように下唇を噛みしめる。


「ち、がう……」



なんとか絞り出した声で、そう返事をした。



「うん、そうだよね。ごめん、変なこと言って」


最後に『ありがとう』と、聞こえるか聞こえないかくらいの声で千景くんは言った。