「いつも、いつだって……千景くんは素敵だよ?」


緊張して、小さな声しか出ない。


「みんなにモテモテだし、人気者で……ほんと尊敬しちゃう」


「そんなのみんな俺の上辺しか見てないからだよ。みんな俺をステータスでしか判断しない。ほんとの俺は情けないくらいカッコ悪いし、褒められるようなことなんてなにもしてないのに」


苦し紛れに吐き出された声。


それは切実な千景くんの本音のように聞こえた。
御曹司という注目される立場で、これまでにたくさんの人からいろんなことを言われてきたのかもしれない。


「いつだって助けてくれて、優しい千景くんのことが……わたしは好きだよ? たとえカッコ悪くても、そんなところも含めて千景くんなんだし、自分を否定する必要はないんじゃないかな」


目の前の弱々しい千景くんも、わたしをからかって笑っている千景くんも、強引でドキドキさせるようなことばかり言う千景くんも全部。


椅子に座る千景くんを、立ったまま上から見おろす。頭のてっぺんから、つま先まで見えた。