頭を撫でられている感覚がしてそっと薄目を開けた。 ぼんやりと視界に映る輪郭には、どことなく見覚えがある。 右手にギュッと優しい温もりを感じた。 「綾乃」 「んっ……」 「目が覚めた? 俺だよ」 聞いてるだけで癒やされるような、耳に馴染む心地いい声。 「千景、くん……?」 まどろみから意識が戻ってきて、完全に正気を取り戻した。 それを見た千景くんが両手でわたしの右手を握りながら、力なく眉の端を下げる。