「借りたいんだけど」


カウンターの向こうからすっと手が伸びてきた。


低く鋭い声にビクンと肩が跳ね上がる。


まさかと思いながら恐る恐る顔を上げると、そこには仏頂面の千景くんがいた。



「これ、いい?」


千景くんは今野くんをチラッと見てから、またわたしに視線を戻す。


「あ、うん!」


珍しいな、千景くんが図書室にくるなんて。


千景くんがいるからなのか、図書室にはさっきよりも女子がグッと増えたように思う。


みんな千景くん目当てなんだろう。


人気者、だもんね……。