その日──。


いつも通り如月をうまく撒いて、裏庭の木陰で涼んでいた俺の目の前に、タタタタタタッと勢いよく女の子が走ってきた。



オレンジと黄色が目に眩しいビタミンカラーのボーダー柄のワンピース。


ふたつ結びになった髪のひとつがほどけて、顔や服にはドロがついている。


──それが、綾乃だった。



『なに、してるの?』


はぁはぁと息を切らす綾乃に、驚きすぎてたどたどしく問いかける。


セキュリティもしっかりしてて、門のところには人が立ってるのに……。


どうやって入ってきたんだ……?