ドアについた手が力なく垂れ下がる。



思わせぶりな態度で、めちゃくちゃわかりやすく接してるのに綾乃には一向に届かない。




顔を赤くしていたりはするものの、それは俺に対して赤くなっているというよりも条件反射という感じで、俺を男だと意識している様子は……ない。


──つまらなかった俺の世界が輝き出したのは、綾乃と初めて出会った、5歳のときのある晴れた夏の日のこと。