「またイメチェンしたい時は、ぜひ来てくださいね」

清高がドアを開けながら言った。未来も「そうします」とニコリと笑う。そして、そのまま振り向かずに帰るつもりだった。

「あの!」

清高に声をかけられ、未来は振り返る。清高が頰を赤く染めながら「これよかったら……」とメモ用紙を差し出していた。

「これは?」

「僕の連絡先、です……」

清高の言葉に未来は驚いてしまう。いつも髪を切ってもらっているとはいえ、お客に連絡先を渡す美容師などいるはずがない。

「どうして……」

未来は緊張しながら訊ねる。清高は頰をかきながら言った。

「初めて出会った時から、堤さんのことが気になっていて……。弟に相談したりして、やっと今日こうして話しかけられました」

「えっ!?でも、前に通りで可愛い女の子が抱きついてましたよね?あの人が彼女さんじゃ……」

未来は混乱し、清高を見つめる。清高の目は真剣でからかっているようには見えない。