変愛中




部活が終わり、そろそろ寝る時間になってきた。

愛寧は、スマホにLINEの通知が来ないか何度も手に取っては、元に戻し手に取っては元に戻すのを繰り返した。


夜10:00をすぎても、LINEが来ないので諦めて寝ようとすると、ピコン!と通知音が鳴る。

素早く手に取り確認すると、ロック画面には


【KOUHEI:起きてる?】


の文字が、あった。



「〜〜〜〜っ!!!起きてます!!」


愛寧は嬉しくて、布団に顔を埋めて足をバタバタと暴れさせる。何度も何度も通知を確認して、顔がにやける。



高鳴る胸を抑えてLINEを開く。即座に友達追加をして返信をする。


【起きてます!!】


1文字1文字を打つのに指先が震えた。心臓がバクバクしすぎて位置がわかるくらいに緊張をしている。指先も心なしか震えてきた。


送るとすぐに既読が着くのでまた心臓が跳ね上がる。



(もしかして、ずっとLINE待ってたのかな??そうだったらいいな〜)


【今日は、急にごめんね、ノート間違っちゃって】


【ううん!大丈夫です!むしろ、届けてくれてありがとう!優しいんだね!】



(わざわざ届けてくれるなんて優しいし..今どんな顔で打ってるのかな...)


愛寧の仕入れた情報では航平は三年生になってからスマホを持ったらしい。


だから、航平がもしフリック入力や、キーボードに慣れてなくって焦りながら打ってくれてたら...と妄想が働く。



そんなこともなく、すぐに返信が来た。


【優しいとか久しぶりに言われた!それと、少しだけノートの中身見ちゃったんだけど、字可愛いね。桜田らしい】




(字が可愛いってなんですかあああああああぁぁぁ!!航平君の方が可愛いよ?!
優しいとか久しぶりに言われたって??いつでも優しいって言ってあげるよ!!)


航平の返信に心が荒ぶる。抑えきれな感情を
体で表現しようとするなら体が爆発してバラバラになってもピョンピョンとはねまわってる。そんな感じだろう。


【そうかな?字が可愛いって初めて言われたよ!】


心とは裏腹に、浮かれてるのが分からない文を送る。


(航平さんも、優しいって言われて嬉しかったのかな...そうだといいな。
てかこれって脈アリな反応では?!わざわざノート届けてくれたり、LINEの追加を聞いたり...)



深く深呼吸をしてトーク画面を見る。

(既読が付いている今この瞬間は航平さんと繋がってるのか....)



「....すき...好き.だよ...」



ぎゅっとスマホを抱えて目をつぶった。

とくん....とくん...と体に響いて愛寧を心地よくさせてくれる。




















「あーーーーーーー!!!」




朝、愛寧の声が家に響き渡る。


「嘘でしょ?!昨日会話の途中で寝ちゃったんだ!!うわ、やらしたぁ!!」


目を開けると電気はつけっぱなしで髪の毛も半乾きのままだった。

そしてLINEを恐る恐る開くと、

【桜田!って感じで可愛いけどね】

【って何送ってるんだろ...】


【もう寝た?おやすみ】


と可愛いスタンプが送られていた。




(うわあ、やらかしたっていう気持ちの方大きいはずなのに、桜田みたい可愛いって褒められてるよね!絶対照れてたよね?!
あー!!なんで寝ちゃったんだろ...)


急いでお詫びのLINEを入れた。

【おはよう!!昨日は途中で寝ちゃったみたい..ごめんね!!今日も一日頑張ろうね!!】





隣の席になったこと、直接話せたこと、LINEで意外な可愛さ見つけたこと..全てが愛寧の片思いの思い出だ。


足取り軽く部屋を出ていき、学校の支度をするのであった。