「.....」
「............はぁ」
「........」
放課後の音楽室はいつもはふざけ合う声で溢れている。または、ピアノを誰かが引いてその周りにみんながいる。
だが、今日は違った。
ミーティングが終わると、愛寧はそくささと楽器を取り出しマウスピースを洗いに音楽室から飛び出す。
いつもより強めに扉が閉まると、それを合図に金管パートのみんなが集まりそれぞれに思ったことを言い合う。
「僕、桜田先輩を怒らせてしまったのでしょうか..?」
「いや、優琴くんはいつもだし、今日は話してなかったから、そんなことはないと思うけど...みんなも心当たりなんてないでしょ??」
「辛辣すぎませんか?!」
誠がサラッとディスると優琴は即座にツッコミを入れるが華麗にスルーされ、話は進む。
「もしかして..藤平に振られたとか??」
「それだったら落ち込んでるでしょ?」
「じゃあ..」
美優が次の提案をしようとする時、愛寧が入ってきた。みんなが愛寧を見るとスキップをして鼻歌を歌って戻ってきているではないか。
さっきまでのイライラはなんだったのか...
みんなが不思議に思っている中で勇気あるものが話しかけた。
「桜田先輩..なんかいい事でもあったんですか?」
((紫田勇者!!!))
誰もが思い、心の中で優琴に拍手を送る。
「えっへへへへへへへへへへへへへへ〜」
「え?」
聞かれた途端に愛寧は奇妙なデレ顔と笑い声でくねくねと行き場のない嬉しさを表現し始めた。
突然の事で誰もが状況を掴めない中ホワイトボードにでかでかと文字を書いていく。
「航平さん好き〜〜〜〜!!!」
文字を叫び百佳に抱きついた。
「何があったの?」
百佳が聞くと愛寧は照れたようにさっきあった出来事を聞くと愛寧は照れながら語り出す。
「あのね、さっきマッピ(マウスピースの略称)を洗いに行ったんだけど、その時藤平さんが来ててね!
今日は階段ダッシュだったらしくて、少しだけお話したの!」
「....それだけ??」
「うん!!」
屈託のない笑顔見せるのでみんなが大きくため息をついた。
「じゃあ、さっきまでの不機嫌はなんだったの?」
誠が聞くと、愛寧は口をとがらせた。
「今日、席替えしたんだけど杏奈ちゃんが愛寧の前でさ、藤平さんのこと、航平って呼び捨てで呼んでてさ...なんか嫌だったの..。彼女じゃないけどさ...」
「あ、そういうこと。」
「もう、びっくりだよね!部活に来たら愛寧ちゃんの惚気聞けるのかと思ったらずっと不機嫌なんだもん!!」
ケラケラと笑って美優が言うと、他の子も頷いた。
「そんなに、怖がらせてたの?!なんかごめんね!」
「大丈夫大丈夫、恋する乙女は大変だね」
にっこりと笑って誠は紫田と肩を組む。
「俺はまだわかんない感情だけどね〜」
ちらっと紫田を見ると頬を赤くして、あやめを見つめている。
あやめは気づいていないようだが、優琴が恋をしていることは愛寧にもわかった。
「東先輩は好きな人いないんですか?」
「俺?いないよ」
数少ない男子達で話し始めたので女子は愛寧に何を話したのか聴き始めた。
