(あ、眉毛の上にある切り傷..もしかして土曜の傷かな?)


授業中、退屈な理科の時間は航平を眺める時間に変わっていた。すぐ目に付いたのは眉毛の上に残ってる切り傷。



かさぶたが取れて新しい皮膚ができている。



(倒れた時にできたのかな...)



じっと傷口を見ていたらいつの間にか航平と目が合っていた。



航平は、困った笑いをして首を傾げる。




「俺の顔になんか付いてる?」

「え?!あ、いや〜..その..」





(横顔を見てたら傷に気がついて眺めてましたとか言えない!!後者はいいとして、前者は完全に変人扱いされる〜..!!)




困り顔すらかっこよく見えてしまう愛寧は恋の病にかかっているのだろう。



「あ、あの...眉毛の傷、もしかして土曜の倒れた時の傷かなって...」



気になっちゃって と付け加えるち、航平は照れたように手で傷口をかくして



「恥ずかしいから見ないで」




と照れた。その照れた顔は愛寧の心に一直線に刺さり愛寧は緩む口元を手で隠した。


(何そのポーズッ!!可愛すぎるんですけど〜..反則じゃないですかぁあ!!!!可愛い。可愛いの一言に尽きる。)



「..?平気??」


「大丈夫。確か、救急車来てたよね?平気だったの?」


「見られてたんだ..」

そう言って、照れ笑いをして愛寧の心をまた掴む。



「あの時は、ボールが頭にあたってそのまま倒れたんだ。これはその時の傷でまだカサブタだったんだけど弟に剥がされて..」



「..脳震盪とか大丈夫だった?」



「軽い脳震盪だったけど、少し休めばよくなったし心配してくれてありがとう。」


"ありがとう"そう言って見せた笑顔はキラキラと愛寧は輝いて見えた。

焼けた肌にまだピンク色の新しい皮膚。ワイルドに見えるけど見せる笑顔はまだ幼さが垣間みる。


(ありがとうって..こちらこそありがとうって言いたい!!弱ってる藤平さんを支えてあげたい.!!)


「えー、すみません。少しだけ自習してください」


先生が教室を出ていくと、教室はだんだんうるさくなる。




愛寧が航平の笑顔に浸っていると、前の栗毛の女の子が振り返った。

「あいっちょ、久しぶり〜!杏奈このクラス初めましての人が多くてー寂しかったんだ〜!あいちょがいてくれてよかった〜!!あと航平も!」


にっこり笑うのは立川杏奈|《たちかわ あんな》運動神経抜群で幼い頃からサッカーを続けている。

可愛い顔を武器にあざとく、男子に人気な女子だ。負けず嫌いなところがたまに傷である。

「あとってなんだよ、おまけかよ。」


「だって、杏奈はあいっちょがいればいいんだし」


えへへ〜と航平を煽る。

言っちゃ悪いが、杏奈は女子ウケが悪く、ぶりっ子と思われてあんまりいい顔はされていない。

愛寧とも1年の頃同じクラスになり身長が低いもの同士でよく話していた仲だ。

あいっちょは愛寧のあだ名で杏奈が勝手に呼んでいる。


「杏奈ちゃん!1年間よろしくね!!」


愛寧も杏奈のことはよく思っていない。とても単純...航平と仲がいいからだ。

同じ小学校出身と言うのもあって小さい頃から交流がある。






(はぁ....こんな事で嫉妬してたらダメだよなぁ....だって彼女でもないのに)