相変わらず愛寧はサッカー部の彼を見て顔がデレデレになっている。


「はぁ...かっこいい...。」

「ずっと藤平見てて飽きないの?」


愛寧が藤平にデレデレになっているのは新学期入ってからずっとなので、誠の隣にいた、同じ3年の高山歩瑚|《たかやま あゆこ》が首を傾げて寄ってくる。

「飽きる要素がどこにあんの??ないよ??ずっーーーーっと見てられるもん!!」


「そ、そっか..」

歩瑚は、苦笑いをして誠の方に戻っていったた。


「ただいま、愛寧ちゃんの愛はすごいな....」





「おかえり、あの子の愛は...変なこじらせ方をしなければ一途な愛になるよ。」



「それに、吹奏楽部と運動部の恋愛なんてベタじゃない?」




話に参加してきたのは、遠野あやめ|《とおの あやめ》。

いつものほほんとしているが、吹部の副部長である。




「ベタ..なのかは分からないけど、まあそうなんのかな?」



「なるよなる!それで試合とかで応援しに吹けたらいいのにね〜!」




なんて、妄想をしてキャッキャウフフするが、中学校の部活のレベルでそんな事はない。




愛寧たちの中学校は、スポーツは盛んであるが文化系の部活はあまり目立つところがない。




吹奏楽部は人数も30人は超えておらず、毎回の大会は銅賞。

いい成果をとっていなくて、楽しんで吹ければいいとお思っている人の方多い。

また、3年と2年の溝は深く、縦に仲がいい部活とは言えない。

3年と2年はほぼ金管と木管でわかれているので仲良くするのが難しい。


「きゃああ!!」


急に叫び声が聞こえ音楽室の中にいた部員が愛寧の方に視線を向ける。


そこには、ハンカチで口元を抑えて顔が真っ白になっている愛寧がいた。


「どうしたの....?」



百佳が聞くと、目に涙の膜を張った愛寧が震える声で説明した。



「い、今...藤平さんが頭にボールぶつけちゃって...そ、それで..倒れちゃって..」



「ええ?!?!」


全員驚いて、校庭を見ると、ゴール前に人が集まっているのがわかる。


先生らしき人物が生徒の中に入っていき藤平をベンチの上に運んでいく。

消防署が近くにあるので、すぐに救急車のサイレンが聞こえてきた。

音楽室の中はザワザワと話し声が大きくなり、学校に来る救急車が珍しいので興奮している後輩に、大好きな人が倒れてしまったショックから泣き始めた愛寧。

それを慰める百佳と歩瑚。誠とあやめは、校庭を見て状況を見ていた。






その時、音楽室の隣の教室で練習をしていた。白井美来《しろい みく》と柳美優|(やなぎ みゆう)が音楽室に入ってきた。



「救急車が来て藤平運ばれたけど大丈夫?!」


愛寧が藤平を好きということは部活中に広まっているので、この事を聞いて全員が心配をした。







その日は、ずっと愛寧の気分が下がっていたので部活は暗い雰囲気終わってしまったが、



次の日、暗さなんて吹き飛ぶくらいの惚気を聞かされる事など誰も知らなかった。