変愛中

「どこに行くのとか決まってんの?」

「いや、まだ誘われただけだからどこに行くかわかんない..」

「服はどうすんの?」

「東が清楚めがいいって言ったから、土曜日にももちゃんと買いに行こうかなって!」

嬉嬉として語る愛寧を後目にあやめが誠に耳打ちをする。

「日曜日、予定入ってなかったの?」

「それがさ...____」

誠があやめに返事をしていると、美優が誠に絡みはしゃぎ始めた。

「あ!なに2人で内緒話してるーー!!!」

「なんだなんだ〜?何を話してんだ〜??」

「えー、ずるい!内緒にするな〜!!」


美優と美来と歩瑚は誠の周りを囲むと、10本の指を自由に動かしながら近づいてくる。

3方向から来るので上手く逃げることができない誠は顔を真っ青にして止め始める。


「や、やめろ!俺まじで苦手なんだってバカ!来んなよ!!」

立ち上がって、周りを警戒するがダメだった。あっという間に倒され脇腹や足裏などをくすぐられる。

「うはははははっ...やめっ..!あっはははは!!」


グネグネと気持ち悪くのたうち回り、周りに影響を与えていく。
ほかの女子たちは、きゃー!とわざとらしく悲鳴をあげ四方に散って観客になる。誠は女子たちをなぎ倒す訳にもいかず、耐え、耐えた結果、何とか逃げ出すことが出来た。



「えー、まじでつまんない!」

「ほんとだよ〜」

「逃げんなよ〜!」


3人はそう言ってくすぐっていた指が汚いと言わんばかりに、机に撫で付け手を振りながら笑っていた。

「お前ら、サイコパスかよ.....てか、汚いもの扱いすんなよな!!くすぐってきたのお前らだぞ?!」


笑いすぎて溢れてきた涙を拭きながら誠は反論した。






くすぐり騒動が引いた頃、続々と基礎のパート練習が始まっていく。7月にはコンクールが始まり、あくまでも目指すはゴールド金賞。kまだ曲決まっていないので、部の基礎の意識を高める週間に毎年5月はなっている。

来週には新入生の部活動体験があり、来月には3年生の修学旅行がある。部の中心となる3年生は、約2年間やってきたにしろ基礎練習が疎かになってしまう時期が来た。だから、コンクール曲でどんな高音が出てきても対応ができるように、ロングトーン、リップスラー、タンギングをいつもより念入りに、HighB♭からの音階の練習をしていくのだ。


金管は1年生がまだ入ってきていないので、3年と2年だけだが、3年8人の2年1人だけだ。各楽器のパートも1人のところがある、誠の担当するホルンパートがそうだ。誠は、い1人の練習嫌だからとトランペットやトロンボーンのパート練習に入れて貰っていたりしている。




「愛寧〜、今日一緒にパート練いいか?」

「いいよ〜」


基礎合奏の譜面を見せ、優琴が3人分の椅子と中央にメトロノームを設置する。

「相変わらず、行動が早いな。」

「愛寧の方が早いし!!」

「おい、後輩に対抗心出すなよ?譲れバカ」

「ふーん」

そっぽをむいた愛寧に呆れた笑いをする誠に、苦笑いしかできない優琴。トロンボーンパートとのパート練はこういう時が5割だったりする。

優琴に対して対抗心を燃やしている愛寧は、負けず嫌いすぎて後輩の仕事もちゃちゃっとやってしまうところがある。まあ、それはちょっとへそが曲がっているとき限定だが..


「藤平の前でそんな態度とれんの?仮に付き合ったとして」



誠は純粋に疑問に思ったことを口にした。

「え?とれるわけないじゃん!完璧な彼女を演じるよ?彼氏の前ではよくいたいでしょ?」

「そういうもんか...紫田も気をつけんだぞ?こういう女子もいるからな」

「...肝に銘じておきます...」