上司は優しい幼なじみ

目線を床に落としたまま、散らばった書類をかき集める。

「失礼いたしました」

目を合わせず、淡々とそう言い横を通り過ぎようとした。

「ちょっと岡田さん」

「…はい」

なんか、’岡田さん’って聞きたくない。
社内だから当然のことだし、プライベートな時間では’陽菜’と呼んでくれるその切り替えにドキドキしていたのに、今はそんな気持ちを持てなかった。

「ほら、これ。ここは社内だからまだよかったけど、外だったら情報漏洩になる。気を付けて」

全て拾ったと思っていたけれど、一枚残っていたんだ。
ますます惨めになる。恥ずかしすぎる…

「…すみません」

書類を受け取り、その場にいられなくなり小走りで去った。