上司は優しい幼なじみ


車が発進しても、車内は静か。
たっくんが音楽を流し、初めて沈黙が破られた。
心地いいサウンドが響き渡る。

私はゆっくりと口を開いた。

「山本さん、しばらくお休みになるのかな?」

「まぁ…過労だからね。プレゼン間近だけど、体が第一だから」

その言葉に、山本さんが作ったパワーポイントが脳裏に浮かんだ。
毎日目をキラキラさせながら仕事をしていた山本さん。
私もちらっと見ただけだけど、プレゼン用の資料はとても綺麗にまとめられていた。
もし復帰が間に合わなかったら、ダメになってしまうのかな。

「その分、陽菜が頑張らないとね」

左折のウィンカーと流れる音楽が不思議なようにマッチし、リズムよく音が重なり合う。
山本さんがいない状況で、私はきちんと仕事ができるのだろうか。

急に不安が押し寄せてきた。