上司は優しい幼なじみ

「…うん、よろしくね」

上から降ってくるイケメンの声。
とても落ち着いた、低くも高くもない、丁度いいトーンだった。

「じゃあ一緒に部署に行こうか、岡田さん」

「はい!お願いします」

前を歩く二人の一歩後ろをついていく。


すれ違う女性社員はもちろん、若い男性社員たちも笑顔で頭を下げ、挨拶を交わす。
日高部長に対して…だろうと思うのだけれど、挨拶を終えた女性社員がポッと頬を赤らめていることから、あ、違うなと思った。




部署に通され、始業5分前に全員の前で挨拶をした。


「本日からお世話になります、岡田 陽菜と申します。ご迷惑おかけしてしまうこともあるかと思いますが、一日でも早く会社の力になれるよう努めてまいりますので、どうぞ宜しくお願いいたします!」

湧き上がる拍手。穏やかな空気に、張り詰めていた緊張の糸がほどけ、ほっと胸を撫で下ろした。