上司は優しい幼なじみ

「今、お茶入れるね。あ、コーヒーの方がいいかな?」

「気にしないでよ。それより、陽菜って本当にフリースタイル好きなんだね。部屋中いたるところにうちの商品があるよ」

気にしないでと言われながらも、とりあえずコーヒーを注ぎ、テーブルに置く。

「うん。大好きなんだー」

「あ、そういえば陽菜、連絡先教えてよ。また昨日みたいなことがあると心配だから」

まるで子を心配する親のようにそう言う。
きっと、たっくんにとって私はまだ小さい時の私なんだろうな。
少し寂しくなりつつも、やっとたっくんとプライベートな連絡先を交換できることが嬉しい。

メッセージアプリに新しく登録された’大川 拓海’をじっくり眺め、それを実感する。

「あと、これ返す」

そう言って差し出したのは五千円札だった。
不思議に思いたっくんを見ると、彼は言葉を続けた。