上司は優しい幼なじみ


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それから怒涛のような日々が続いた。
商品企画部がただ商品を考えるだけではなく、今回の色移りの件もそうだけど、お客様の手元に届いた後のことまで気にかけ、必要あらば対処し、次の商品企画に繋げていく。

私はまだまだ下っ端だから蚊帳の外といった感じだけれど、山本さんの隣で勉強する毎日だ。

山本さんが’初心を忘れる’といった理由が少しわかったような気がした。
好きだけではできない仕事だ。



給湯室にコーヒーを取りに行くと、すでに先客がいた。

「あ、お疲れ様です」

「おー。お疲れ様」

たっくんが壁にもたれかかりながらコーヒーを飲んでいた。
ただ飲んでいるだけなのに、そんな姿でさえも絵になり、色っぽさがある。

その横で自分用のコーヒーを注ぎ、反対の壁に軽く背中をつけた。
やけどしないように念入りにふーふーと吐息をかけ、コーヒーを冷ます。