上司は優しい幼なじみ

「私はF市で、同じく一人暮らしの身であります…」

「お、まじか。じゃあ俺が住んでいるところとさほど遠くないね。送ってってあげられる」

自然な流れでそんなこと言うものだから拾い損ねるところだった。

「え、おく…送る?」

「あ、迷惑だった?」

…そんな!滅相もございません!

「全然!じゃあ、甘えてもいい?」

そういうと、たれ目の目じりをさらに下げた。

「もちろん」


パスタは、さすがたっくんがおすすめしてくれた通り、とてもおいしかった。
当たり前のように一人でお会計を進めようとするから、私も慌てて財布を取り出す。
そんな私には目もくれず、済ませてしまった。

「たっくん、お金…」

「いらないよ。そのかわり今度は飲みに行こうよ。その時はさすがに送ってあげられないけど」

次の約束まで取り交わしてしまった。
たっくんに恋していたあの頃の感情が、少し戻ってきたような、そんな気がした。