上司は優しい幼なじみ


「山本さん、頑張ってください。応援しています」

精一杯の笑顔を向けた。
山本さんは眉を八の字にし、「ありがとう」と小さく返す。

PC画面に向き直り、頬を両手で軽く二回叩いて気合を入れなおした。




無理やり作った予定の場所は、前に真由美ちゃんと行った定食屋。
座るなり彼女は前のめりになって質問攻めしてくる。

「で、今日のこれと、陽菜ちゃんの伊達メガネと大川係長の異動は関係あるんだよね?」

「うっ…」

相変わらず鋭い子だ。
何も話していないのにすべてを見抜いている。まるで探偵。

「私が推理してみてもいい?多分だけど、係長から異動の話聞かされて、そのことでちょっと言い合いになっちゃって、陽菜ちゃん泣いて目が腫れたのを隠すために伊達メガネしている。で、係長から逃げるために私と食事行く約束作った、って感じ?」

…指摘箇所が一つもない。
監視していましたか?と聞きたいくらい合っている。

「はい…」

「んもう!陽菜ちゃんってばバカ!」

テーブルを両手でドンと叩き、コップの中の水が波打つ。

「このまま係長行かせたら、二人の関係終わっちゃうかもしれないよ?時間ないんだから、無視なんかしてる場合じゃないよ」

「真由美ちゃん…」

「そりゃわかるよ?元カノの山本さんも一緒だと尚更不安になると思う。でもさ、係長のことも山本さんのことも、陽菜ちゃんよく知ってるじゃん」

…そうだ。不安になるたびに、それ以上の安心を与えてくれた。
たっくんの愛も、山本さんの言葉も、半田さんの後押しだってそうだ。