上司は優しい幼なじみ

「それにしても本当驚いたよ。まさか陽菜がうちの会社に入社してくるなんてさ」

15年ぶりに聞いた、たっくんの’陽菜’。
会社では’岡田さん’だったから、改めてここがプライベート空間だと感じさせる。

「たっくん、私のこと気づいていたの?」

「まぁ、なんとなく。確信を得たのは今朝エントランスで会った時だけど」

え?ということは、会う前から私の存在は知っていたってこと?

きょとんとする私を見て何を言いたいのか察したのか、たっくんはそのまま言葉を続けた。

「一応俺も管理職なもんで。新入社員の情報はあらかじめ知っていたよ。
生年月日、名前が一致していたけど、まさかとは思ったんだ。そんな偶然あるかなって。
でも、今朝会って、あぁ、陽菜だって思った」

それは、昔とあまり変わっていないってことかな?
15年前の小学生だった頃と…?あれ?それはまずくない?

「そ、そっかー!やっぱりまだまだお子様に見えるのかなぁ。あはは」

わざとらく大きな声で自虐的に応えた。