上司は優しい幼なじみ

「俺は…陽菜のことを離すつもりはない。陽菜も同じ気持ちでいてくれるなら、待っていてほしいんだ」

「私はたっくん以外に考えられないよ。でも…」

私は、不安だった。
国内ならまだしも、海を越えた距離ができてしまうことに。

たっくんを信じていないわけではない。
でも、海を越えたその先に、今以上の環境や将来が待っているかもしれない。

もしそうだった時、たっくんは私を選んでくれるのだろうか…


「’でも’、何?」

うつむく私の顔をのぞき込む。
何も答えないでいると、彼はそのまま言葉を続けた。

「もし、陽菜の気持ちが変わってしまったのなら、その時は言ってほしい。陽菜の背中を押せるように、努力する」

「…っ!!」

そんなこと、冗談でも言ってほしくなかった。

’好きじゃなくなっても仕方がない’

そう言われているようなものだ。

「どうしてっ…どうして全部、一人で決めつけちゃうの…」

「陽菜?」

目頭が熱くなってくるのがわかる。
ダメだ…このままだと泣いてしまう。

カバンを持ち、たっくんの顔も見ずに店を飛び出した。