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気のせいだろうか。
最近、たっくんの様子が変だ。
一見普通に仕事しているように見えるのだが、ふとした時に一点を見つめる瞬間がある。
日高部長とよくフロアを出入りしているから、何か大変なことが起きてその対応に追われているのかもしれない。
なにせ、デートも仕事終わりの食事や飲みも行けていないくらいだ。
ちゃんとご飯食べているのかな、ちゃんと眠れているのかな。
そんな心配ばかりしている。
私はそっと立ち上がり、給湯室に向かった。
コーヒーを淹れて、たっくんのデスクに「お疲れ様です」と一言添えて置く。
「あぁ、ありがとう。すまないな」
笑顔を向けるたっくんだが、私にはその表情が少し固く見えた。
「最近お疲れのようですけど、大丈夫ですか?」
「ん、大丈夫。ありがとう」
業務中に深堀するわけにもいかず、歯がゆさを残したまま席に戻った。
これが時間外の出来事だったら、根掘り葉掘り聞いて無理やりでもご飯を食べさせていただろう。
お昼休憩から戻ると、山本さんが雑誌のようなものを凝視していた。
今見ているものとは別に、何冊か横に積まれて置いてある。
---オーストラリアでの暮らし方
「山本さん、オーストラリア行くんですか?」
「へっ!?」
驚かせてしまったようで、山本さんの肩が跳ねあがる。



