上司は優しい幼なじみ

レジ前まで連れてこられ、カウンターに分厚いリングファイルを置いた。

「これは…?」

「リニューアルした家具の注文リスト。山本さんから聞いたよ。家具の軽量化の件、岡田さん発案なんだって?」

そのリストには、恐らく注文を受けた日と、商品名、顧客名が書かれていた。

「今日だけでこんなに注文が入ってさ。それまでは大型家具の購入者層に偏りがあったけど、リニューアルしてから幅広く、特に若い女性が増えたんだ」

「え…」

それは、まさに私が商品の企画にあたって目的としていたことだった。
商品化には至らなかったけれど、たっくんが別の形で実現してくれた。

「そういえばもう聞いてるかな?海外に家具専門の系列店を展開させるって話」

「海外…ですか?」

それは初耳だ。噂すら小耳に挟んだことない。

「あ、まだ聞いていなかったんだね。近年、家具を強化しているから、うまくいけばいいんだけどねぇ」

何も聞いていないし、自分にはそこまで関係ないだろう。
そんなことを思っていた。