山本さんが企画した’照明付き加湿器’がリリースされた。
身近で生まれた商品がこうして店頭に並ぶ。
その一連までを見届けた、私にとって最初の商品。

静かに蒸気を発し、オレンジ色の柔らかいライトが、多くの人を深い眠りに導くのだろう。

仕事終わりに職場から一番近いフリースタイルの店舗にやって来た。

’NEW’と書かれたPOPと共に、エントランスの目立つところに大きく展開されている。

私と同年代くらいの女性のお客さんが、商品POPをじっと眺め、在庫を一つ手に取って店の奥に入っていった。

商品化にあたり、山本さんがどれだけのこだわりを持って時間をかけて準備をしていたかを一番近くで見ていた。
ここにいるお客さんは当然その裏を知らない。
だからこそ、お客さんの素直なリアクションこそが、商品企画部のエネルギーになっているんだ。


「あれ?確か君は…山本さんのところの」

声の主の方を振り向く。

「あ、奥村店長?」

以前、山本さんと店舗周りに行った際、顔を合わせたことがあった。
一度きりだったけれど、覚えてくれていたんだ。

「お疲れ様。今日は一人で?」

「はい。仕事も終わって、久々にゆっくり買い物しようと思って来てみました」

21時閉店のこの店舗は、今の時間帯は客数が少ないらしく、バタバタしている様子は感じられなかった。
奥村店長は「そういえば」と何か思い出したようで、私を店の奥まで促した。