上司は優しい幼なじみ

先走るお母さんと、それを落ち着かせるお父さんをよそに、優斗は呆れ顔で私たちに向かって口を開いた。

「あとは姉貴の部屋でイチャイチャしてきなよ。あ、でもここんち壁薄いから、あんま声出すなよ?」

「ちょっ!!優斗!!」

いたずらっぽく舌を出す我が弟。嫌な大人にだけはならないでほしい。そう思った。

「そ、そうだたっくん。私の部屋に昔の写真アルバムがあるの。一緒に見ない?」

さすがに家族がいる家であんなことやこんなことをするつもりは一切ない。
それはたっくんだって同じ気持ちのはず。

それよりもせっかく帰ってきたことだし、懐かしい思い出に浸りたくなりそう提案した。

「お、いいね。俺も見たい」

二階に上がり、「適当に座って」と促して棚からアルバムを引っ張り出した。
両親は、私と優斗、それぞれのアルバムを作ってくれていた。
生まれてから小学校を卒業する時期までの写真がたっぷり詰め込まれている。

もちろん、たっくんとの思い出も。

「陽菜の部屋、懐かしいよ。変わらないな」

今の一人暮らしの部屋はフリースタイルの商品で溢れかえっているけれど、実家の部屋は昔の趣味を残したままの状態。
寝具もキャラクターものだし、勉強机もそのままで、教科書もまだ残っている。

「ほら、これこれ」

テーブルにアルバムを開いて置いた。
パラパラとめくり、私とたっくんのツーショットの写真が何枚も貼られたページで手が止まる。