上司は優しい幼なじみ

「陽菜、ずっと’お兄ちゃんがほしい’なんて言ってて、拓海くんが可愛がってくれていたから本当に感謝しているのよ?もちろんこのまま陽菜を貰ってくれるのよね?」

身を乗り出し、目を輝かせながらたっくんを凝視する。
私は慌てて口を挟んだ。

「お母さん!たっくんを困らせないで!」

正直、たっくんがどう思っているのかは気になる。
でも、その答えを聞くのが怖いと思っている自分もいる。

’困らせないで’と言いながら、本当は聞くのが怖いんだ。

「き、気にしないでね、たっくん」

隣のたっくんに目を配ると、先ほどまで浮かべていた笑みが消えていた。
その表情に、胸がチクりと痛む。
ほら…思った通りだ。

内心期待しながらも、彼のリアクションに肩を落とす。

唐揚げに箸を伸ばそうとしたとき、彼の言葉でその動きが止まった。

「…もちろん、そのつもりで付き合っていますよ」

真剣な表情で、真っすぐ、力強くそう言った。
二泊置いたくらいでお母さんが発狂する。

「きゃーーーー!!!!お父さん、すぐにウェディングドレスと式場の準備を!!!」

「お、おい気が早すぎるだろ…」

「母さん、うぜー」

我が家族の各々のリアクションを眺めながら、たっくんは楽しそうに微笑んだ。
その視線がゆっくりと私に移り、優しく小声で耳打ちされた。

「本気だから」

「…っ!!」

顔が紅潮したのは、言うまでもない。