上司は優しい幼なじみ

「たく…にぃ?」

懐かしい、この呼び方。
優斗は昔から’たくにぃ’と呼んでくっついていたっけ。
小さかったからあまり覚えていないかなと思っていたけれど、遊んでもらっていた記憶はしっかり残っているようだった。

「優斗、久しぶりだな。でっかくなったな」

たっくんは立ち上がり、自分よりも少し低い位置にある優斗の頭に手を置いた。

「たくにぃこそ、でっかくなったな」

それに倣うように、優斗もたっくんの頭に手を置く。

傍から見たら何とも言えぬ面白い光景だった。

「拓海くん、今は陽菜の上司なんですって」

「へ、へぇー…すげぇ」

家族も集まり、皆で食卓を囲う。
幼馴染ド定番の思い出話が花を咲かせた。

率先して話始めるのは決まってお母さん。
一番喋っているのに一番箸が進んでいるという、謎の両立。

「陽菜ってば、拓海くんが引っ越すってなったとき、連絡とりたいからって携帯ねだってきてね?さすがに小さかったから持たせるわけにもいかなくて、大泣きされたのを覚えているわ~」

「お、お母さん恥ずかしいって…」

「そんなこともあったなぁ。よく考えてみれば、陽菜があそこまで押し通そうとしたの初めてだったかもしれないな…今思えば、携帯くらい持たせてやってもよかったんじゃ…」

「お父さん?手紙の方が相手のことを考えてじっくり書けるのよ?陽菜も楽しそうに書いていたじゃない?」

確かに、携帯を拒否されたときは大泣きしたけれど、手紙は手紙で楽しかったかもしれない。
それにこうして、意外な形で再会できたし。過去のこともいい思い出だ。