上司は優しい幼なじみ

「せーの、でいい?岡田さん」

「はい、謎に自信あります」

山本さんの合図で口が動く。

「せーの…」

真由美ちゃんは楽しそうに私たちの顔を交互に見る。

「半田さん」

「半田くん」

私たちは同時に真由美ちゃんに顔を向けた。
彼女は恥ずかしそうに「正解です」とつぶやく。

「半田くんかー!確かにいいやつ」

「しばらく彼女いないってずっとぼやいていましたもんね」

あんなに素敵なのに、どうして彼女がいないのかずっとわからなかった。
浮いた話もあまり聞かないし…

でも、こうして身近で恋の芽が咲き、自分のことのように嬉しかった。


*


商品企画部は夏季休暇に入り、そして今日は実家に帰る日。
そう、この人と…

「泊まりなしでいいのか?俺のこと気にしないでゆっくりしてくればいいのに」

隣でハンドルを握るたっくん。
彼の車は私の実家に向けて走っている。

「大丈夫大丈夫!どうせお正月にも帰るんだし」

しばらくして景色が見慣れたものへと変わっていく。
たっくんも「懐かしいな」としみじみつぶやく。

やがて私の家の前で停車し、助手席から降りた。

「ただいまー!」

リビングからお母さんが顔をのぞかせる。
唐揚げの出来立ての香りが鼻をくすぐった。