上司は優しい幼なじみ

「宮田さん、どうかした?」

山本さんもそれに気づいたようで、心配そうに真由美ちゃんの顔を覗き込んだ。

まさか…結婚の話なんかして、傷つけてしまった?
真由美ちゃん、まだたっくんのこと好きなんじゃ…

チクッと胸が痛んだ。
そっと手を伸ばし真由美ちゃんの肩に触れようとすると、急に顔を上げた。

この顔、覚えている…

前に私に’好きな人ができた’と告白した、あの時と同じ顔だ。

まさか…

「真由美ちゃん、もしかして…恋、しちゃった?」

恐る恐る尋ねると、目じりを下げて幸せそうに微笑んだ。

「…しちゃった。しかもね、今独身だし、彼女もいないって確認済み」

驚くほどの成長を遂げていた真由美ちゃん。
どうやら、最初に相手がいるかを確認してから恋するようにしているらしい。
そんなコントロールする術を持っているなんて…さすがとしか言いようがない。

そして気になるのは、その相手方だ。

「それって、私たちの知っている人?」

山本さんは身を乗り出し、ぐっと顔を真由美ちゃんに近づけた。

「よーく知っていますよ」

その言葉に、何故か直感で’ある人’の顔が浮かんだ。
私たちは互いに顔を見合わせ、こくりと頷く。