上司は優しい幼なじみ

冷蔵庫の扉に手を掛けながら自分自身に言い聞かせる。
開いて中を見てみると驚いた。

「何にもないじゃん…」

中に入っていたのは缶ビール数本、卵、ケチャップやマヨネーズといった最低限の調味料…以上解散。

もしかして、たっくんは一切料理はしない人…?

係長だし、偉い人だし、ちゃんとしたもの食べて栄養付けて頑張ってもらわないと!

乱れた髪を軽く整え、財布を持って部屋を飛び出した。

確か近くにスーパーがあったはず。

定かではない記憶を頼りに足を進めていると、思った通り、スーパーが目に入った。


卵はあったから、厚揚げトーストにしてみよう。
厚揚げの真ん中を底抜けしない程度の深さで四角く切り抜き、そこに卵を落としてマヨネーズをかける。
アルミホイルを敷いてトースターで焼けば、厚揚げトーストの出来上がり、というわけだ。

フリーターの頃、閉店までのシフトの時の夜ご飯でよく作っていた。
安くて、食べても罪悪感がなくて結構好きだった。

厚揚げをカゴに入れ、簡単にサラダでも作ろうと、トマト、アボカドも入れる。


意気揚々と「ただいまー!」と玄関に入ると、奥からドタドタと走ってくる音が聞こえる。

「陽菜!?」

「た、ただいま…って、たっくん!?その恰好は!?」

玄関のドアを勢いよく閉め、思わず目を両手で覆ってしまう。
いくら全てを知っているからとはいえ、平常な心を持っている時にその姿はあまりにも刺激的だ。