上司は優しい幼なじみ

地図アプリを頼りに足を進め、予定通り10分前にお店の前に到着した。

写真の通り、おしゃれな外観だ。
レトロなレンガ調の壁に、入り口の扉は木材にくすんだ深い緑のペンキで塗装されている。
扉のすぐ横にがあり、店内の様子がよく見えるようになっている。

恥ずかしい話、こういったお店に入ったことがない。
ちょっと背伸びしたおしゃれなカフェは何度か行ったことがあるけれど。

いったん深呼吸し、扉のノブに手をかけた。
入った途端、ちょうど近くを通りがかっていたウェイターの男性と目が合い、背筋を伸ばし「いらっしゃいませ」と軽く頭を下げた。

「ご予約のお客様でしょうか?」

「あ、えっと…」

予約?19時にこことは言われてたけど、予約してたのかな?

返事に困っていると、ウェイターの奥から見慣れた男性が近づいてきた。

「待ち合わせです」

「お待ち合わせのお客様ですね。失礼いたしました」

先ほどよりも少し深く頭を下げる。