上司は優しい幼なじみ

「私…大川係長に’仕事の相談がある’って車に乗せてもらったの。本当はそんなのなかったのに。半ば無理やりに二人きりになって。告白…したんだ。でも大川係長、’彼女がいる’って。誰か聞いたら、相手は陽菜ちゃんって言うからさ、びっくりしちゃって」

たっくんから聞いた話と少しずつ点が繋がっていく。
私は真由美ちゃんがたっくんを好きだって知っていた。
でも多分、たっくんはそれを知らないから、仲がいい私たちの関係性を守ろうとしてくれていたのかな。

「まじかーって思ったよ。また相手がいる人を好きになっちゃったかーって思って。しかもその相手が陽菜ちゃんだなんて。今までさ、相手がいる人を好きになったことは何回もあったけれど、その相手が自分の友達だったなんてことなかったから…さすがにまいっちゃって。相変わらずうまくいかないなーって」

弱々しく、笑みを交えながら話す彼女の姿に、胸が痛くなった。

「怒ら…ないの？真由美ちゃん」

「どうして？」

「だって…私、真由美ちゃんに隠していた。真由美ちゃんが彼を好きだって聞いて、応援するかのような言葉を掛けた」

真由美ちゃんは私を責めるような言い方ではなく、むしろ自分が悪いと頭を下げる。
どうしてこんなに素敵な子が、報われない運命を辿ってしまうのだろうと本気で思った。