上司は優しい幼なじみ

「俺の質問の答えは?」

私の頬を両手で挟み、半ば強引に顔をたっくんの方に向かせた。
頬の肉が中心に寄り、不細工な顔を見せているに違いない。

恥ずかしくて力づくでたっくんの両手を引き剥がす。

「し、心配してくれてたの、半田さん」

「…心配?」

「そうだよ…たっくんと真由美ちゃんの距離感が近いの気づいていたみたいだし。私も態度に出してたみたいだから、大丈夫か?って。ただ、それだけ」

すると彼は体を正面に向き直し、「そっか」と言葉をこぼした。

「じゃあ陽菜、帰ったらメッセージの返事しろよ?週末の行きたいところ」

「うん!」

店を出て、たっくんの車に乗り込む。
モヤモヤが晴れた安心感からか、眠気に襲われ夢の中に落ちていく。

気づいたら私のアパートに到着していた。

「おやすみ。また明日ね」

「あぁ、おやすみ」

部屋に入り、無理やりしまい込んだガイドブックを取り出した。
付箋を貼ったページをめくっていき、メッセージアプリを開く。

’中華街で食べ歩きしたい!’

しばらくすると返事が来た。

’陽菜っぽいな’

スマホを両手で握りしめ、背中からベッドに倒れこむ。

週末デート…楽しみだ。