上司は優しい幼なじみ

てっきり、二人でどこかに行ったのかと思っていた。
急に緊張感が抜け、力が入っていた拳がふわっと緩まる。

「その…相談の内容っていうのは…?」

たっくんは気難しそうな表情を浮かべる。
しばらくの沈黙の後、彼は言葉を紡ぐ。

「内容は、絶対誰にも言わないでほしいって言われているから…ごめん、言えない。でもこれだけは信じてほしい。宮田さんとは、何もないから」

私の目をしっかり見て、力強く言った。
私は知っている。たっくんは、変な嘘をつく人じゃないってことを。

「わかった…たっくんを信じるよ」

そう言うと、彼の表情が柔らかくなった。

気分が落ち着いた私は、グラスを持って再びカクテルを口にする。

「あ、そういえばさ。今日半田と何話していたの?」

「え、今日?」

半田さんと…?

今日の出来事を思いめぐらす。
たっくんの言っていることは、おそらくフロアの外に呼び出された時のことを言っているのだろうと思った。

気まずそうに言うものだから、もしかしたらこれは嫉妬かも、と私の中の邪心が生き生きと踊りだす。

「もしかして、妬いてるの?」

するとたっくんは恥ずかしそうにウーロン茶を一気に飲み干した。
耳がほんのりと赤くなっている。

か…可愛い!!

「何…ニヤニヤしてるの」

「えー?してないよー」

何だか楽しくなった。