上司は優しい幼なじみ

前と同じカクテルを頼む。
しばらくすると、人影が私を覆った。

「ウーロン茶お願いします」

「たっくん」

隣に腰かけ、私をじっと見る。
何から話そうか…と、頭をフル回転させた。

「それで…今度は何だったのかな。陽菜が俺を避けていた理由」

単刀直入!!ぴくっと肩が揺れた。

深く深呼吸し、ゆっくりと口を開いた。

「私、見ちゃって…。たっくんが真由美ちゃんと車で帰っていくところ」

彼の目を真っすぐ見て、はっきりと言う。

すると少し驚いたように目を見開き、眉間に皺を寄せ指でその部分をなぞる。

「見てたんだな…」

「うん…」

ウーロン茶が出され、たっくんは一口飲んだ。
私は生唾を飲み、その言葉の続きを待つ。

「あの時は…帰るタイミングがたまたま被って、途中まで一緒に歩いていたんだ。そしたら、宮田さんが’仕事のことで相談がある’って言って。’明日でもいいか’って聞いたんだけど、’どうしても今がいい’って」

急に喉が乾燥し、カクテルを飲んで潤した。
太ももの上に落とした拳をギュッと握る。

「さすがに駐車場までついてきたのには驚いたんだ。じゃあこの場でって思ったんだが、’話長くなるから乗せてほしい’って聞かなくて。このまま部下を放置するわけにもいかないし、かと言って車に二人きりっていうのもマズイと思って。一か八かで陽菜も呼ぼうと思った。二人仲いいから、その方が逆に話しやすいと思って」

「そう…だったんだ」

「でも、俺にしか話せない内容だって言われて。仕方なく車で駅まで乗せていったんだ」