上司は優しい幼なじみ

フロアに戻ると、自席に座って作業していた真由美ちゃんが遠目で私たちを見ていた。
一瞬目が合い、反射的に逸らす。

たっくんが戻るや否や、真由美ちゃんは柔らかい髪をふわふわなびかせ、彼の元に寄る。

業務上仕方のないことだが、今の私にとってあの二人の距離感に敏感になってしまう。

今日、嫌でもたっくんに話を聞かないといけない。
何を言われるのか、想像しただけでも震えあがりそう。

気分を落としながら業務を進めていると、フロアの外から半田さんが顔をのぞかせ、小さく手招きをしていた。

「…？」

ゆっくりと立ち上がり、半田さんの元に歩み寄る。

「どうかされました？」

すると半田さんは目を細め、じっと何かを見つめている様子。
その視線の先を追うと、おそらくたっくんと真由美ちゃんだ。

「俺も気になってるんだよなぁ、あの二人」

「え？」

「あ、いやさ。岡田さん最近ずっと二人の様子チラチラ見てるっしょ？俺も席近いから、異常なまでに宮田さんが大川に接触しているところ、嫌でもよく見えるんだ」

’異常なまでに’か。
意識して見ないようにはしていたけれど、やっぱりそうだったんだ。