上司は優しい幼なじみ

「こういうのって、モチベーションになるよね」

山本さんは、柔らかい笑みを浮かべる。

「私、もっともっと頑張ります!」

キャンペーンはもうすぐ終わるらしいけれど、家具の売れ行きが好調だからまた違った形の企画が進むようだ。
最初は動画出演なんて抵抗しかなかった。
でも、結果的に出てよかったと今は心から思っている。



今日の業務も残りあと一時間。
ラストスパートをかけようとトップスの袖を肘上まで上げた時、たっくんから声がかかった。

「岡田さん、ちょっと会議室までいい?」

「えっ…あ、はい。今行きます」

会議室に入るなり、たっくんはドアにもたれるような体勢になり、腕を組んで私をじっと見た。

まさかこのタイミングで二人きりになるとは思わなかった。

あまりにも見られるものだから耐えられなくなり、視線を床に落とす。


「俺からの話は二つ。まず一つ目。山本さんから聞いたからもしかしたらもう耳に入っているかもしれないけど、この前撮った動画の件」

「あ…はい、聞きました。嬉しかったです。係長が言ってくださってた、’等身大’という意味が、本当の意味でわかったような気がしました」

不思議と落ち着いて話せた。
私の言葉にたっくんは笑みを浮かべた。

「うん。数字って、好調も不調も均一に見ることはできるけど、消費者からの言葉って、不備に関するクレームだったり、指摘が多いんだ。良いサービス、良い商品にわざわざ賛辞する人の方が少ないから、どうしても現場だとマイナス要素の言葉を受けることが多くなる。だからこういう意見って、珍しいとまでは言わないけど、貴重なんだよ」