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「岡田さん、前に打ち合わせしたリストの件、実際にメーカーでの生産が始まったから、販促用のサンプル先に手配しておいてもらっていい?」
翌日、朝礼が終わったすぐのタイミングでたっくんが話しかけてきた。
「はい、わかりました」
言われてすぐ、メーカーにメールを送信した。
軽量化に向けて素材選びをし、実際に商品になる段階まで来た。
公式でリニューアルを既に打ち出しており、予約も始まっているそうだ。
「岡田さん、今いい話してもいい?」
山本さんがキーボードを打つ手を止め、体ごとこちらに向けた。
私も同じように彼女と向き合う形になる。
「いい話…ですか?」
「この前ね、店舗周りに行ったの。そしたらたまたま、お客さんとスタッフの会話が耳に入ったんだけど、新生活キャンペーンの動画のことで」
「は、はい…」
ゴクリと唾を飲み込む。
’いい話’という前置きはあったものの、こうして改めて向き合って話すとなると、少し緊張する。
「そのお客さんがね、’動画を見て、部屋の中一式模様替えをしようと思いました。動画の中の女性が自然体で、とても印象的でした’って言ってたの。消費者の反応って、私たちみたいな本社勤務の人間は数字でしか実感できないけど、現場だと直接声が聞こえるから、また違った良さがあるのよね」
その言葉に、こみあげるものがあった。
キャンペーンの企画も動画もたっくん発案だけど、まさか少し出た動画にそんな反応を貰えるなんて。



