上司は優しい幼なじみ

結局まともに会話することなく一日が終わる。
定時になり、待っていましたと言わんばかりに誰よりも早くフロアを出た。

たまには定時ぴったりで帰るのもいいよね、と自分に言い聞かせるかのように。


帰りの電車の中。
メッセージアプリを開くと、珍しくお母さんから連絡が来ていた。

’夏休み、帰ってこれるんでしょ?’

うちの会社は、部署ごとに異なるらしいが4日ほど夏季休暇がある。
一人暮らしをしているが、実家は関東県内の為、電車で簡単に帰れる距離にある。

’そのつもりだよー’

’せっかくなら拓海くんも連れてきてね♪’

うっ…

入社してお母さんにたっくんの存在を話した。
その時お母さんったら物凄く驚きつつ喜んでいて、家に連れてきてとしつこかったっけ。

’たっくんも予定とかあるだろうし…とりあえず話してみるね’

付き合っていることはまだ言っていない。
しょっちゅうお母さんと連絡とっていたわけでもなかったし、バタバタしていてそれどころではなかった。

夏休みか…まだ少し先だけど、今こんな状況だからな。

お母さんのメッセージの下にたっくんの履歴。
私が返事していないから当たり前だが、彼からの連絡はない。